五日目
ぐるぅり、ぐるぅり・・・回る天蓋の下に寝る私は夢を見る。
「動く事が出来たなら・・・。僕の腕が、足が、心が動く事が出来たなら・・・。」
出所の分からぬ囁きは、次第に「言葉」となって私の耳に届いてくる。
「潰れていなければ・・・。僕の意志が、瞳が、耳が潰れていなければ・・・。」
私は視界をグルリとさまよわせる。誰もいない。
「言葉」はまるで五月雨のように空から降ってきている事に気付く。私は頭を上げる。視界に入る。薄暗い森の中に真っ赤な林檎が、宙に浮かぶように色彩を放っている。
「綺麗・・・」私は呟く。私が手をかけているこの樹木こそが林檎の木なのだと知る。
そこに「言葉の主」が見える。
真っ赤な林檎に混じって、薄紫にむくれた「頭部」が「生っている」。その目は褐色の紐で十字に結われていて、光は届いていないようである。耳は、ない。それを見る私の心にも恐怖はなく、ただ、そこにある光景として、認識する事が出来るのが不思議に感じる。
「人生に絶望して・・・あの丘の教会に助けを求めたんだよ。僕は無神論者で、聖誕祭にも顔を出さなかったし・・・何より僕は、虫も殺した事があるし、動物の肉も食していたんだから・・・。」
「頭部」は囁くようにしゃべり続ける。
「その時は、神様がいるのなら・・・頼りたい気分だったんだ・・・。あの丘の教会の、神父様に僕の絶望を訊いてもらって・・・ただ一言・・・あなたは悪くないよ・・・って言ってもらえれば・・・良かったんだよ。」
私は静かにその「言葉」に耳を傾ける。
「でも、神父様は・・・僕に言った・・・。『神を信じぬものに神は息吹を与えない。』って・・・それだけを、一言・・・。僕はその足でこの森に向かって・・・この木で首を吊ったんだ・・・。あなたも・・・じきに・・・そうなるよ・・・。」
私は、何も感じない・・・。疑問を、口にする。
・・・暗転・・・
ぐるぅり、ぐるぅり・・・回る天蓋の下で私は目を覚ます。今日はここまでのようだ・・・。
~つづく~
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